海外事業者の投資案内は、費目と計算の考え方を知る参考になります。一方で、日本の工事見積やIMGAMEの実績には置き換えられません。費用を確定させる前に、誰の収支を計算するのかと、採用する条件をそろえることが出発点です。
施設所有者の収支と、ゲーム運営者の収支を分ける
テナントとして誘致する施設側では、賃料収入、工事負担、開業支援、共用部の運用費などを確認します。運営側では、チケット収入に対し、人員、物件、作品、販売、保守の費用を計上します。飲食店への送客や空き区画の解消は施設側の評価項目になっても、そのまま運営者の収入にはなりません。
例えば、施設側が内装の一部を負担する計画では、運営側の初期支出だけを見ると少なく見えます。契約期間、更新、途中終了、原状回復の負担も一緒に確認してください。投資主体と支払時期を分けた表を作ると、費用が消えたのか、別の当事者へ移っただけなのかを区別できます。
投資する主体と費用負担を整理した後は、商業施設への脱出ゲーム誘致の進め方で、事業計画と区画・運営条件をつなげて検討できます。
初期投資と、開業後も繰り返す費用を分けて見積もる
項目が見切れる場合は横にスクロールできます 脱出ゲーム施設の費用を見落とさないための整理表
| 区分 | 主な確認項目 | 見積もりで分ける条件 |
|---|---|---|
| 区画・設備 | 設計、内装、空調、電気、音響、制御機器 | 既存設備を使える範囲と追加工事 |
| 作品・権利 | シナリオ、謎、演出、素材、ブランド等の利用 | 初回制作、利用期間、再演・改変・更新の費用 |
| 開業準備 | 採用、研修、試運転、予約環境、告知 | 営業開始前に支出する人件費や物件費 |
| 日常運営 | 賃料、スタッフ、通信、光熱、販売手数料 | 固定費と、販売数や営業時間で変わる費用 |
| 保守・更新 | 消耗品、修理、作品入替え、設備更新 | 支出額と、作業に伴う休業期間 |
| 終了・資金 | 撤去、原状回復、借入返済、運転資金 | 損益上の費用と現金の支払時期 |
見積書の総額を比較する前に、含まれる範囲をそろえてください。安く見える案でも、スタッフ研修や保守が別契約の場合があります。見積依頼の段階で、謎解きの見積書を比較する確認項目を使い、別途費用を明記してもらいます。
予算を削る場合も、費目名だけで判断しないことが大切です。演出の追加と、日常点検や交換部材では役割が異なります。謎解きの予算配分を参考に、削減したときの運営への影響を確認します。
売上試算は「販売可能枠」と「売れる割合」を混ぜない
販売可能枠は、受付・説明・体験・退出・リセットを含む運営計画から決めます。作品時間だけで営業時間を割ると、回と回の間に必要な作業が抜けます。複数作品を同時に動かせるかも、スタッフと設備の条件を確認してから計算してください。
以下は計算方法を説明するための仮定です。実在店舗の料金、稼働率、需要予測ではありません。同じ条件で運営するゲーム空間を2つ、各空間で1日5枠、月26日営業とすると、販売可能数は月260枠です。
- 販売可能枠:2空間 × 5枠/日 × 26日 = 260枠/月
- 販売済み枠:260枠 × 50% = 130枠/月
- 有料参加人数:130枠 × 平均4人/枠 = 520人/月
- チケット売上:520人 × 税抜の平均実収入3,000円/人 = 156万円/月
ここでは「販売済み枠」を、返金・中止を除き実施した有料の枠と定義しています。平均人数と実収入も、その枠だけで計算します。3,000円は値引き後のチケット代で、決済・販売手数料を引く前の仮定です。定価、入金額、会計上の売上を同じ欄に混ぜないでください。
固定費と変動費を入れ、損益分岐点を枠数で確かめる
次の費用もすべて計算説明用の仮定です。市場相場、IMGAMEの料金・原価・実績を示していません。1人当たり変動費を税抜600円、月額固定費を121万円と置きます。ここでの固定費は人件費70万円、賃料・光熱・通信・保守・広告等40万円、減価償却費10万円、支払利息1万円の合計です。人件費には事業主負担分など必要な人件費を含める前提とし、追加の人員が必要になればこの条件から見直します。
月次損益は消費税を除いて計算し、法人税等を引く前の金額を示します。変動費600円は参加者数に応じた消耗品や販売関連費等の合計を単純化したものです。実際は、人数比例、売上比例、公演回数比例の費用を分けて入力してください。
項目が見切れる場合は横にスクロールできます 架空の月次収支:260枠/月・平均4人・税抜3,000円/人、固定費は毎月1,210,000円
| 枠販売率 | 販売済み枠/参加人数 | 税抜売上 | 変動費 | 法人税等控除前の月次損益 |
|---|---|---|---|---|
| 30% | 78枠/312人 | 936,000円 | 187,200円 | -461,200円 |
| 50% | 130枠/520人 | 1,560,000円 | 312,000円 | 38,000円 |
| 70% | 182枠/728人 | 2,184,000円 | 436,800円 | 537,200円 |
- 1枠の売上:平均4人 × 税抜3,000円 = 12,000円。
- 1枠の変動費:平均4人 × 税抜600円 = 2,400円。
- 1枠から固定費を賄える額:12,000円 − 2,400円 = 9,600円。
- 損益分岐枠数:1,210,000円 ÷ 9,600円 = 約126.04枠。整数枠では127枠/月が必要です。
- 127枠は260枠の約48.85%。126枠では400円の赤字、127枠では9,200円の黒字になります。
「約49%売れれば達成できる」という需要予測ではありません。この仮定で黒字になる条件を逆算したものです。平均人数が3人へ減れば、1枠の売上も変動費も変わります。月の営業枠が減る、スタッフを増員するなどの変更があれば、分母と固定費を計算し直します。
自社の条件を記入する月次収支表
表をコピーし、同じ月・同じ作品群で単位をそろえて記入してください。作品ごとに料金や人数が違う場合は作品別に計算して合算します。
項目が見切れる場合は横にスクロールできます 月次収支の記入用シート
| 入力・計算項目 | 自社記入欄 | 計算・確認方法 |
|---|---|---|
| 対象期間・作品 | __年__月/作品__ | 営業日と休止日、同時運営の条件を記入 |
| 販売可能枠 S | __枠/月 | 各空間の日別販売枠を合計 |
| 販売済み枠 N/平均人数 A | __枠/月・__人/枠 | 中止・返金を除く実施分でそろえる |
| 税抜実収入 P/変動費 V | __円/人・__円/人 | 値引き後、手数料控除前のP。手数料等はVへ計上 |
| 固定費 F | __円/月 | 人件費・物件費・減価償却・支払利息等を列挙 |
| 月次損益 | __円/月 | N × A × (P − V) − F。法人税等の前 |
| 損益分岐枠数 | __枠/月 | F ÷ {A × (P − V)}を整数枠へ切り上げ |
| 前提を確認する担当・期限 | 担当__/期限__ | P − Vが0以下、または必要枠がSを超える場合は条件を再設計 |
黒字でも資金が足りるとは限らない|支払う月で資金表を作る
資金表は、売上を計上した月ではなく実際の入出金予定で作ります。日本政策金融公庫の各種書式にも資金繰り表と記入例があります。下表は仕組みを説明するための独自の架空例で、工事代金の分割払いやカード売上の入金遅れはない仮定です。
資金表は円・実際の入出金額で統一し、課税取引は税込です。チケット、変動費、賃料等40万円、工事・設備代はすべて消費税10%の対象と仮定しています。給与等に消費税は上乗せせず、減価償却費は現金支出から外します。毎月の固定費支払は、人件費700,000円+賃料等440,000円+利息10,000円=1,150,000円です。借入元金100,000円は別行へ記載します。実際の決済手数料等は税区分が異なることがあるため、すべての費用に一律10%を足さず、項目ごとに確認してください。
項目が見切れる場合は横にスクロールできます 架空の資金表:開業前から2カ月目まで。金額は円、課税取引は税込
| 入出金項目 | 開業前月 | 開業1カ月目:50%販売 | 開業2カ月目:30%販売 |
|---|---|---|---|
| 月初現預金 | 0 | 3,480,000 | 3,602,800 |
| 自己資金・借入の入金 | 8,000,000 | 0 | 0 |
| チケット代の入金 | 0 | 1,716,000 | 1,029,600 |
| 工事・初期設備の支払 | 3,300,000 | 0 | 0 |
| 開業前の研修等人件費 | 400,000 | 0 | 0 |
| 開業前の物件費支払 | 220,000 | 0 | 0 |
| 返還を見込む保証金の差入れ | 600,000 | 0 | 0 |
| 変動費の支払 | 0 | 343,200 | 205,920 |
| 固定費の支払(利息を含む) | 0 | 1,150,000 | 1,150,000 |
| 借入元金返済 | 0 | 100,000 | 100,000 |
| 追加設備の支払 | 0 | 0 | 220,000 |
| 消費税・法人税等の納付 | 0 | 0 | 0 |
| 月末現預金 | 3,480,000 | 3,602,800 | 2,956,480 |
開業前の800万円は資金調達額の仮定で、標準投資額ではありません。保証金はこの例では全額返還を見込む差入れとしています。工事・設備、保証金、借入元金は、支払額をそのまま月次損益の費用へ重ねて計上しません。追加設備は月末支払・翌月使用開始の仮定です。資産の扱いと減価償却の額・開始時期は、個別の見積と会計方針で確認します。
表の税金納付0円は、この3カ月内に納付予定がないという仮定で、納税不要という意味ではありません。開業1カ月目の現預金増加122,800円には、税抜の月次損益38,000円のほか、受け取った消費税等と支払った消費税等の差84,800円が含まれます。この例では、現金支出を伴わない減価償却費10万円と、損益の費用に含めない元金返済10万円が同額のため相殺されます。自社の金額が異なる場合は、それぞれ調整します。この差額だけを最終納付額とみなさず、税区分や申告条件を確認し、予定納付月まで資金表を延ばしてください。税区分の基本は国税庁の消費税の説明、給与等の扱いは課税対象とならない取引の説明を参照できます。
更新・撤退・入金遅れも支払予定へ記入する
項目が見切れる場合は横にスクロールできます 自社の資金表へ追加する支払・回収予定
| 項目 | 金額・税区分の記入欄 | 支払・回収月と確認先 |
|---|---|---|
| 工事・制作の着手金/中間金/残金 | 各__円(税込/非課税等__) | __月/契約・請求書/担当__ |
| カード・予約サイト売上の入金 | __円(手数料控除前後__) | __月/締日・振込日__ |
| 作品更新・休業中の支出 | __円/休止__枠 | __月/制作・運営担当__ |
| 消費税・法人税等の納付 | __円(試算/確定__) | __月/経理確認__ |
| 原状回復・撤去と保証金の回収 | 支払__円/回収__円 | 各__月/貸主確認__ |
| 最低限確保する手元資金 | __円/下回る月__ | 不足額__円/対応期限__ |
売上が落ちた月と作品更新が重なる場合も試算します。枠販売率50%で小幅な黒字になる計画でも、工事残金、元金返済、納税の時期が重なれば資金が不足することがあります。残高だけでなく「いつ・誰が・いくら支払うか」を残してください。
海外の利益表示は、母集団と除外費用を先に読む
Escapologyの公式投資案内には、加盟金や会場の構築費用、継続的な料金が掲載されています。ただし、売上表示は米国の独立型FC店舗における2025年の高い売上額を基にしています。平均利益の表示は成績上位3分の1の店舗を対象とし、全店舗の平均ではありません。公式ページの投資条件と脚注を併せて読む必要があります。
同ページの「主要費用を控除した後の利益」には、修繕・保守など、さらに控除すべき費用があることも記載されています。見出しの利益率を日本の計画へ転記したり、為替換算した構築費を国内相場としたりする使い方はできません。海外の数値は、見積項目や費用範囲を確認する材料として使います。
稟議では、投資額より先に未確定の前提を見せる
稟議資料には、物件条件、作品構成、営業時間、枠数、料金、人数の前提を記載します。売上が計画を下回ったときに、費用をどこまで調整できるかも、契約と人員計画から確認します。次の三欄を使い、未確認の条件を0円や確定値として扱わないようにします。
項目が見切れる場合は横にスクロールできます 稟議へ添える前提確認表:数値は自社資料を記入
| 確認項目 | 確認済みの根拠 | 仮定として置く値 | 未確認・確認担当 |
|---|---|---|---|
| 区画・設備 | 図面名__/日付__ | 改修範囲__ | 追加設備__/担当__ |
| 販売枠と需要 | 営業制約__ | 販売率__%/人数__ | 需要検証方法__/担当__ |
| 投資・運営費 | 見積番号__/期限__ | 予備費__円 | 別途費用__/担当__ |
| 資金繰り | 入金予定・支払契約__ | 更新月__/支出__円 | 納税・撤退費__/担当__ |
承認を求めるのが調査費なのか、本契約を含む出店投資なのかも明確にします。調査結果によって再見積もりとなる場合など、追加承認が必要になる条件も添えてください。事業の実現性は、仮定を隠すよりも、確認の順序を示すことで検討しやすくなります。
物件条件は空き区画の確認シート、自社と委託先の費用負担は導入方式と責任分担の比較へ進むと整理できます。
IMGAMEの会社紹介では、体験型施設の企画・運営、施設プロデュース、内装施工、コンテンツ開発を案内しています。標準投資額や利益を約束する案内ではありません。候補物件、想定方式、開業時期、相談したい範囲を整理し、プロジェクト相談から個別条件をご相談ください。
脱出ゲームの事業計画でよくある質問
平日と休日で販売率が違う場合、どう計算しますか?
平日と休日それぞれの販売可能枠に、想定販売率、平均人数、税抜実収入を掛けて合算します。例えば平日180枠×30%=54枠、休日80枠×80%=64枠なら月118枠です。この例では月260枠に販売率の単純平均55%を掛けた143枠とは一致しません。
会計上は黒字でも資金不足になるのはどの支出ですか?
工事・設備代、借入元金、保証金、税金の支払や、売上代金の回収遅れを確認します。減価償却費は現金支出と分け、工事代金と二重に差し引かないようにします。更新・撤退も含めて月別の実際の入出金を記入してください。
投資稟議に未確定の見積をどう記載しますか?
確認済みの見積番号・有効期限、企画上の仮定、未確認事項を別欄にします。未確認額を0円にせず、概算を置くなら仮定と根拠を記載します。誰がいつ確定させるか、増額時にどの承認へ戻るかまで添えます。
モールの来館者数からチケット売上を計算できますか?
来館者の全員が購入するわけではありません。来館者数は商圏や客層の参考とし、販売枠への需要は別に検証します。海外事業者の売上・利益表示も、日本の販売率やIMGAMEの実績へ置き換えられません。
情報確認日:2026年10月7日
