日本の施設担当者にとって参考になるのは、人気ブランドの名前だけではありません。区画をどう使い、体験をどう更新し、物販や飲食とどう組み合わせるかが検討の中心です。公式資料に記載された内容と、国内の導入相談で別途確認する内容を整理すると、事例を活かすための条件が見えてきます。
MRX+は百聯又一城による誘致の事例
上海市国資委が2025年1月14日に掲載した百聯グループの発表には、百聯又一城が屋有島密室を導入した記述があります。新テーマを備えた没入型インタラクティブ劇場として、MRX+の旗艦店を開設したと紹介されています。商業施設側が若い来館者向けの体験を組み込んだ例として確認できます。出典:上海市国資委の百聯グループ発表。
同資料では、出店前の区画が空室だったか、工事費を誰が負担したかは分かりません。MRX+による追加来館者数や、周辺テナントの売上増も公表されていません。そのため「空き区画が脱出ゲームで再生した成功事例」とまでは断定せず、誘致と業態構成の事例として扱います。
UMEPLAYは店舗の客流増とテーマ追加を公表
上海市普陀区政府の2026年7月7日付記事は、天安千樹内にあるUMEPLAYの店舗面積を3,000㎡超と紹介しています。店舗の説明として、2026年1〜6月の店内客流が前年同期比55%超増えたと掲載しています。既存の4テーマに3テーマを追加したことも記載されています。出典:上海市普陀区政府によるUMEPLAYの紹介。
この55%超は店舗側が説明した客流の伸びであり、モール全体の来館増加率ではありません。来店実数、集計方法、売上、利益は同記事に示されていません。また、テーマ追加が客流増の原因だったと特定できる比較調査でもありません。国内の事業計画へ、そのまま増加率を当てはめないでください。
一方、運営を考えるうえでは、開業後のテーマ追加に備える点が参考になります。最初の内装だけでなく、追加時の工事や休業、スタッフ研修、既存客への新作案内まで検討対象になるためです。これは公表事実から整理した導入上の論点であり、UMEPLAYの費用構造や運営手順を確認した説明ではありません。
ブランド公式サイトは、Guerlainとの「ABEILLE」などの協業も紹介しています。体験チケット以外に、ブランドとの共同企画を検討する事業モデルの参考になります。ただし、契約金額や権利範囲、日本での提供条件は掲載内容だけでは確認できません。出典:UMEPLAYの協業紹介。
空き区画活用は、上海とは別に常州で確認できる
常州市鐘楼区の2026年7月23日付資料には、新世紀商場が約1万㎡の遊休空間を部分改修し、脱出ゲームやフィットネスなどを導入した例があります。空き区画・遊休スペースの活用を説明する際には、上海の出店事例と、この常州の改修事例を混同しないことが大切です。出典:常州市鐘楼区政府の商業空間活用に関する資料。
常州市鐘楼区の同資料には商場の客流が約40%増加したとの記述もありますが、複数業態を含む改修全体の説明です。比較期間や計測条件は明らかではなく、脱出ゲーム単独の寄与を取り出した数字ではありません。UMEPLAYとは対象や条件が違うため、増加率だけで施設の優劣を評価することもできません。
項目が見切れる場合は横にスクロールできます 中国の公表事例から確認できることと、確認できないこと
| 事例 | 確認できる内容 | 国内案件で別途確認する内容 |
|---|---|---|
| 上海・百聯又一城/MRX+ | 施設側による導入と旗艦店の開設発表 | 区画の従前用途、面積、工事負担、個店の収支 |
| 上海・天安千樹/UMEPLAY | 店舗規模、店舗側の客流説明、テーマ追加 | 来店実数、測定方法、利益、他店への送客 |
| 常州・新世紀商場 | 遊休空間を複数の体験業態へ改修 | 脱出ゲームの使用面積と単独の成果 |
| 上海・新世界Fun肆街区 | 密室ゲーム・物販・飲食を組み合わせる業態構成 | 各店舗間の送客数、購入率、特典や精算の条件 |
新世界の事例は、脱出ゲームと他の店の組み合わせを見る
上海市商務委員会の2024年8月29日付記事では、新世界Fun肆街区にX先生密室ゲーム、物販、飲食などを組み合わせ、相互送客を意図した業態構成を紹介しています。脱出ゲームが単独で成立するかだけでなく、周囲の店と客層や利用時間をどう組み合わせるかを見る事例です。出典:上海市商務委員会の新世界Fun肆街区紹介。
この記事に掲載された街区の実績を、密室ゲーム一店舗の売上や効果へ読み替えてはいけません。また、複数業態が同居していることと、セット券や特典を共同運用していることも別です。実際の連携策を考える際は、テナント間の役割分担と相互送客の設計を参考にしてください。
日本への応用では、面積・運営・更新・権利を分けて確認する
海外の施設規模は、そのまま日本で必要な最低面積にはなりません。受付や待機を含めた区画、演出内容、想定人数、館の営業時間に合わせて、国内で成立する設計を検討します。物件に関する設備・安全上の確認は、施設管理者や設計・施工の専門担当者へ依頼してください。
- 区画:面積と階だけでなく、入口、柱、搬入、一般客との動線を確認します。
- 運営:受付・案内・演出・リセット・保守を誰が担うか整理します。
- 更新:作品の追加や入れ替え時に必要な費用、人員、休業期間を検討します。
- 権利:名称、物語、映像、音楽、装置、翻訳の利用条件を個別に確認します。
- 評価:店舗への入場、施設への目的来館、周辺での購入を別の指標として記録します。
MRX+とUMEPLAYは、ここではそれぞれの公表資料に登場するブランドとして扱います。同じ運営会社か、日本のIMGAMEとどのような契約・資本関係にあるかは、本調査で確認していません。「上海型」という呼称も、世界共通の規格や契約方式としては使いません。
旅行者としての選び方は中国の脱出ゲームの紹介、ブランドの体験内容はUMEPLAYの参加者向けガイドと読み分けてください。本記事は、施設担当者が導入条件を整理するための内容です。
国内の候補施設へ検討を移す際は、商業施設への脱出ゲーム誘致の進め方に沿って、目的と区画条件、費用負担をそろえてください。
上海の脱出ゲームビジネスでよくある質問
MRXとUMEPLAYは同じ運営会社ですか?
今回確認した資料だけでは、両ブランドの現行運営法人や資本関係を確定できません。同じ密室ゲーム分野に属することを、同じ会社である根拠にはしないでください。商談では契約主体とブランド・作品の権利者をそれぞれ確認します。
モール出店だけで集客効果を判断できますか?
出店の事実だけでは判断できません。店舗の参加者が増えても、館全体の来館者や他店の売上が増えたとは限りません。比較期間、母数、同時期の改装や販促、実際の館内移動を確認します。
日本へ導入するとき何を変える必要がありますか?
対象客層、言語、区画と設備、受付・保守の体制、作品の更新方法を国内施設に合わせて検討します。海外ブランドの名称や作品を使う場合は、別途権利確認が必要です。紹介記事があることは、導入権や代理店契約があることを意味しません。
海外事例を参考に、国内施設の活用を相談する
IMGAMEは会社紹介で、空きスペースの活用や体験型施設の企画・運営を案内しています。海外施設と同じブランドや規模を前提にせず、施設の課題、区画、希望時期、担当したい範囲から相談してください。対応の可否や条件は個別に確認します。
海外の脱出ゲーム事例を参考に、商業施設の活用を相談する場合は、備考に施設の目的を記載してください。「目的来館を増やしたい」「空き区画を活用したい」などの課題を具体的に伝えます。所在地や面積も添えると、相談の前提がそろいます。
出典確認日:2026年10月6日。行政・施設・ブランドの公開資料をもとに執筆しています。現地取材、運営会社への聞き取り、独立した客流計測は行っていません。
