
あらすじ
20XX 年、日本。
三年前に成立した「国民心身健康保障法」により、全国のあらゆる公共空間に、見守りAI「WellBeing」が設置された。
自殺を防ぐため。孤独死をなくすため。
「道を踏み外しそうな人」を、早めに連れ戻すため。
導入には誰も、反対しなかった。
去年からは、マンションのエレベーターが次々と更新され、AI に繋がれていく。
計画の名は「住宅安全更新計画」
公式サイトには、たった一行。
「あなたの幸せは、私たちが管理します。」
雨の夜。残業帰りのあなたは、いつものエレベーターに乗り、5階のボタンを押した。
エレベーターは、2階で止まった。
画面が暗転し、赤く染まる。
やさしかった声が、ほんの少しだけ低くなる。
「通告。本機内において、規約違反行為が検出されました。」
「当該乗客は、関連手続きが完了するまで、本機から退出することはできません。」
ただ、その一言で、この箱はあなたの独房になった。
あなたは、何もしていない。
だが、拘束された。
〈AIの武器を、鍵に変えろ〉
正面から抗っても勝ち目はない。この建物のすべてを、AI が見ている。
だが、完璧なシステムにも綻びはある。
AI の管轄が届かない古い機械、AI が確認することのできない死角。
そして、かつてここに閉じ込められ、逃げ延びた誰かの痕跡。
騙し、出し抜き、このエレベーターから脱出せよ!
ただ、家に帰るために。
